モーバイルエージェントシステム

佐藤一郎 1997/11/20

はじめに

現在、分散オブジェクトコンピューティング概念は研究段階を越え、OMG 社の CORBA や Microsoft 社の DCOM/OLE をはじめとして多くのシステムが提案されています。これらは、ローカルまたはリモートオブジェクト間の通信機能を提供し、オブジェクト間の協調動作を実現します。しかし、分散システムはそのハードウェア的な制約からコンピュータ間の通信遅延が大きく、結果としてリモートオブジェクト間の協調は、ローカルオブジェクト間のそれと比べてコストが大きく、さらに、分散システム自体の通信ネットワークの構成や、コンピュータアーキテクチャ、OSに強く依存したものになっています。また、協調形態もRPCをもとにしたリモートメソッド呼び出しなどが主体であり、分散システムの並列性を活かしたものでありません。これらは分散オブジェクトコンピューティングの性能と機能において大きな障害となっており、その解決策が望まれています。

また、近年コンピュータの用途自体が、数値計算やデータ処理、文章整形などから、電子メールやWWWホームページなどを代表されるようにコミュニケーションメディアやデータベースとしての用途に移りつつあります。この事実は、コンピューティングシステムの形態がメインフレームやデスクトップなどの計算を主体としたものから、PDAをはじめとする携帯端末や、ネットワーク機能をもつ家電製品への移行を意味します。こうしたシステムでは、常時通信ネットワークに接続されているわけではなく、断続的な通信接続に対応した通信メカニズムが必要となります、また、耐久性やコスト上の問題からハードディスクなどの2次記憶装置をもたないことが考えられます。このため、データやプログラムを通信ネットワークを介してロードまたはセーブさせることが必要となります。

ここで提案するシステムでは、分散オブジェクト自体にコンピュータ間の移動能力を加えます。これにより、分散オブジェクトとそれを実行するコンピュータの間の束縛を取り除かれ、分散オブジェクトはシステム構成の変化に柔軟に対応できるようになります。また、分散オブジェクトは自らを分散システム内で移動させることにより、リモートオブジェクト間協調をローカルオブジェクト間協調として実現し、コンピュータ間の通信を最小化します。

(途中)

 

目次

概要

モーバイルエージェントアーキテクチャ(コアシステム)

API フレームワーク(コアAPI)

プログラミング入門(コアシステムとコアAPI)

エージェントグループアーキテクチャ(ダイナミックエージェントプレース)

エージェントグループによるエージェントの組織化

既存システムとの比較

今後の予定・課題

論文

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